AIのホームページ診断は信用できる?Web制作の現場で感じるAI活用の注意点

最近、ホームページ制作やリニューアルの打ち合わせで、こんなやり取りが増えました。
AIを使って、自社のホームページを分析したり、文章や構成を考えたりすることが、かなり身近になってきました。
私たち自身も、Web制作の仕事の中でAIを活用しています。
情報整理やアイデア出し、別の視点からの検討など、使い方によっては非常に便利です。
ただ、実際の制作現場では、
「AIの提案としては間違っていない。でも、この会社には採用しない方がいい」
と判断することも少なくありません。
なぜなのでしょうか。
AIによるホームページ診断は信用できる?
結論から言えば、AIによるホームページ診断は、ホームページを改善するための参考として十分活用できます。
たとえば、
・誰向けのサービスなのか分かりやすいか
・サービスのメリットが伝わっているか
・問い合わせまでの導線が分かりやすいか
・情報が整理されているか
・SEOを意識したページ構成になっているか
こうした一般的なWebマーケティングの観点から、改善点を洗い出すことはAIが得意な領域です。
ただし、ここで注意したいことがあります。
「一般的に正しい改善」と「その事業にとって必要な改善」は、必ずしも同じではありません。
実際にあった「ベネフィットをもっと上に」という提案
先日、あるクライアントからAIを使って考えたホームページの改善案を見せていただきました。
コーチングに近い領域のサービスを提供している方です。
その中に、
「サービスを受けることで、どんな未来や変化が得られるのかを、もっと上部で明確に伝えた方がいい」
という趣旨の提案がありました。
Web集客の考え方として、これは決して間違いではありません。
ホームページでは、サービスの特徴だけでなく
「お客様がどう変わるのか」というベネフィットを伝えることはとても重要です。
私たちも、必要なサイトでは当然そうします。
ただ、今回のサイトを見たとき、
「これをそのまま採用すると、この人でなくてもいいホームページになってしまう」
と感じました。
問題は、ベネフィットを上に置くかどうかではありません。
「誰にとってのベネフィットを伝えるのか」
です。
同じサービスでも、ターゲットによって伝える入口は変わる
このクライアントが本当に届けたいのは、コーチングを初めて知る人ではありませんでした。
- すでにコーチングを受けた経験がある。
- 自分自身とも向き合ってきた。
- 本を読んだり、学んだり、さまざまな方法を試してきた。
それでも、
「いろいろやってきたのに、なぜか同じところで壁にぶつかる」
と感じている人たちです。
その人に対して、
「コーチングを受けると、こんな未来が手に入ります」
と一般的なベネフィットを大きく見せても、それほど強くは響きません。
このサービスの特徴は、メタ認知という視点を使い、
今、自分が「こうだ」と思っているもの自体を、違う視点から捉え直すこと。
そして、
自分では見えていなかった選択肢に気づくこと。
だからこのホームページでは、
「コーチングを受けるとどうなれるのか」
よりも先に、
「なぜ、いろいろやってきたのに、ここから先へ進めないのか」
を理解してもらうことの方が重要だと判断しました。
同じ「コーチング」というサービスでも、
誰を対象にするかによって、
ホームページで最初に伝えるべきことは変わります。
AIのホームページ改善案が「一般論」になりやすい理由
AIは、入力された情報をもとに非常に多くの知識やパターンから回答を作ります。
そのため、
「ターゲットを明確にする」
「ベネフィットを伝える」
「ファーストビューでサービス内容を分かりやすくする」
「CTAを目立たせる」
といった、Webマーケティングの基本的な改善案を出すことは得意です。
問題は、それを自分の事業にどう適用するかです。
ホームページを改善するとき、本当はもっと多くのことを考える必要があります。
誰に来てほしいホームページなのか
今のお客様と、これから増やしたいお客様は同じとは限りません。
これまでのお客様を分析した結果、今後は少し違う層に届けたいこともあります。
その人は、すでに何を知っているのか
初心者に必要な説明と、すでにさまざまなサービスを経験してきた人に必要な説明は違います。
サービスを知らない人に説明するページなのか。
比較検討している人に選んでもらうページなのか。
ここでも構成は変わります。
なぜ、他ではなくこのサービスなのか
同じ業種、同じサービス名でも、実際に提供している価値は事業者によって違います。
一般的な業界のメリットばかりを並べると、かえってその人ならではの違いが見えなくなることがあります。
AIの提案を採用する前に確認したい3つのこと
AIにホームページを診断してもらったときは、
その改善案をすぐ実行するのではなく、次の3つを確認してみてください。
1.これは「一般的に正しいこと」ではないか?
一般論であること自体が悪いわけではありません。
ただ、それがすでにできている場合もありますし、自社には優先順位が低い場合もあります。
「なぜ自分のサイトでは、この改善が必要なのか」まで確認してみましょう。
2.本当に来てほしいお客様を前提にしているか?
AIに十分な情報を渡していなければ、AIは本当の顧客像までは分かりません。
年齢や性別だけではなく、
- 何を経験してきた人なのか。
- 今、何に困っているのか。
- 何をすでに試したのか。
- 何を大切にしているのか。
そこまで考えることで、必要な言葉は変わります。
3.その改善によって「その会社らしさ」が消えていないか?
ホームページを分かりやすくしようとすると、
業界でよく使われる言葉や構成に近づいていくことがあります。
結果として、
「分かりやすくなったけれど、他社との違いが分からない」
というホームページになることもあります。
改善前より整っている。
でも、その会社である理由が薄くなっている。
これは避けたいところです。
AI時代のホームページ制作で、人が考えるべきこと
ホームページ制作の中でAIができることは、
これからさらに増えていくでしょう。
だからこそ私たちは、制作そのもの以上に、
その前の部分が重要になると考えています。
・誰に届けたいのか。
・その人に何を伝えたいのか。
・今の事業と、これからやりたい事業は同じなのか。
・商品を変える必要があるのか。
・商品はそのままで、見せ方を変えればいいのか。
ホームページの打ち合わせから始まって、
いつの間にか事業そのものについて話していることも珍しくありません。
そこを飛ばして、一般的な「売れるホームページ」の型だけを当てはめてしまうと、
「きれいだけど、その人がいないホームページ」
になってしまいます。
AIの答えを使うのも、使わないのも、人の判断
AIによるホームページ診断は、とても便利です。
私たちもこれから、さらに活用していくと思います。
大切なのは、AIが出した答えを「正解」としてそのまま実行することではありません。
その答えを見ながら、
これは一般的に正しい答えなのか。
それとも、
自分が届けたい人に、自分たちの価値を届けるための答えなのか。
を考えること。
AIでホームページを作れる時代になったからこそ、
「何を作るか」だけではなく、
なぜそうするのかを判断することが、
これまで以上に大切になっていると感じています。
Mind Plusでは、ホームページを作る前に、
事業の現在地やこれから届けたいお客様についてお話しする時間を大切にしています。
「サイトを変えたいけれど、何を変えるべきか分からない」
「AIで診断してみたけれど、本当にこの方向でいいのか判断できない」
そんな場合も、まずはホームページだけではなく、
事業全体を見ながら整理していきます。