「安いほど良い」と思ってた僕が値上げした理由。
「新婚旅行はタイにしよう」
そう決めて・・・
タイへの新婚旅行の飛行機代・ホテル代を払ったのは、
まだ会社に勤めてた頃の5月ごろでした。
その時には、数か月後に起業することは決めていました。
だけど、楽天家の僕は
「その頃には、うまく行ってて
贅沢な旅行ができるかもしれない。」
なんて、思ってたわけです。
で・・・
実際に新婚旅行に行く前日。12月の最終週の頃。
僕の銀行口座には、0円。
財布の中には、5万円しか入ってませんでした。
とにかくお金がなくて、
体調を崩しても病院も我慢する。
食費も切り詰めてるような状態。
肉屋で一番安い肉を買って
八百屋で一番安い野菜を買う。
カップラーメンは高いから、
インスタントラーメンを買う。
そんな生活をしていました。
妻も一緒に起業したので、
同じような状態でした。
上手くいかない理由もわからない。
どこよりも値段を安くして、
販売しているのになぜ売れないんだろう??
その謎が解けないままでした。
本音では、新婚旅行をキャンセルしたかった・・・。
旅行に行くくらいだったら、仕事してたかったから・・・。
だけど、
とんでもなく楽しそうな妻の顔。
既に払ってしまって戻ってこない旅費。
を考えると、
「行くしかないな・・・」と思っていました。
もう、テンションも低くて・・・
僕の頭の中にあったのは「これから仕事どうしよう」って不安。
そして・・・
「旅行先でも、なるべくお金使わないように過ごさなきゃ・・・」
という気持ちだけでした。
ホテルは、とんでもないくらいキレイなホテルでした。
食事も、朝、晩ついていました。
「よし。これだったら
お金使わずに楽しめる!! 」
そう思い、大分気持ちが軽くなりました。
だけど、部屋に着いた後の
妻の一言に愕然としました。
妻:「明日、朝からオプショナルツアーでスキューバに行こう。」
僕:「えっ?? それいくらかかるの??」
妻:「1人1万円だから、2万円だね。 」
僕:「いやいやいやいや、
おれ全財産が5万円しかないよ。 」
妻:「大丈夫だよ。私半分出すし。 」
ずーーーっとビーチで過ごす予定だった僕には、
進んでお金を使おうとする妻が理解不能でした。
なんとか丸め込もうとしたけど、無理でした。
そして・・・
「新婚旅行でスキューバダイビングするのが、
私の夢だったの。」
という言葉で、僕が折れる形になりました。
結婚して、10か月。
何もしてあげられてない現状。
それどころか、起業してから生活は苦しくなるばかり。
でも、不満も言わずに、
いつも「これからこれから。」と言い続けてくれる妻。
「こんな夢くらい叶えないと・・・。」と思えました。
次の日の早朝から、スキューバダイビングに出かけました。
港に迎えに来てくれたスキューバのスタッフの方達は
満面の笑みでした。
正直僕は、
「こんな楽な仕事で羨ましいなー 」
なんて思って、ひがんでました。
「僕たちの仕事は、こんなに楽じゃない。
こんなんで、お金もらえるなら良いなー。 」
と・・・。
実は、すさまじく船酔いの僕。
出発して、すぐに体調が悪くなって、寝っぱなしでした・・・。
ああ、体調悪くなるし・・・
お金もかかるし・・・
やっぱり来なきゃよかった。
「やりたくない。」「お金使いたくない。」
嫌々来てしまった僕は、
またそんなネガティブモードに入ってました。
だけど、船酔いで口を開く元気もありません。
そんな時、妻の声がちょくちょく耳に入ってきました。
「うわ!すごいキレイだよ!!」
「幸せすぎる!! 」
「一生の思い出になる!! 」
「夢がかなった!!」
延々と続けられる「喜びの声」を聞くうちに、
僕の具合もだんだんとよくなってきました。
そして、あまりにもその声が続くので
笑いながら妻の方を振り返ると・・・
スキューバのスタッフの人達が、
妻をにこやかに見守ってくれてました。
船の中の全員が笑顔
になっている瞬間でした。
無事にスキューバも終わり、港まで送ってもらった時、
僕は心からスタッフの人に
「ありがとうございます。」と言えました。
「楽しかったねー。」
「最高だったねー。 」
「幸せ!!」
終わって、ホテルに向かう最中も・・・
その日の夜も・・・
次の日も・・・
妻はそう言い続けてました。
その言葉を聞くたびに、幸せになりました。
そして、同時に
大事なことに気付いていきました。
起業してからずっと僕は
失うことばかり考えるようになってしまっていたこと。
「ここに使ったら、お金がなくなる。 」
「なるべくお金を使わないように・・・。 」
そんな思考に陥っていました。
だから・・・
なるべく安い値段をつけないといけない。
安いサービスの方が、喜んでもらえる。
いつしか、そんな考えに陥っていました。
だから、スキューバの2万円ですら
「高すぎる!! 」
と感じてしまっていました。
だけど、無理やり連れて行かれたスキューバが終わった後、
僕は・・・
「たった2万円なんて安すぎる!! 」
という考えになっていました。
大事な人が、あんなに幸せそうにしてて・・・
それを観て、僕も幸せを感じられて・・・
スタッフの人たちも笑顔でいてくれて・・・
ずっとずっと思い出に残る。
そうやって・・・
「失うもの」以上に、
「得られるもの」に目を向けさせてもらったから。
そして、それは僕の仕事に対する考え方も
変えていきました。
「安い方が喜んでくれる。 」
当たり前のように、僕はそう思っていました。
だけど、しっかり考えてみると
それは違いました。
「安くても、幸せをつくれなかったら意味がない。
高くても、それ以上の幸せを創りだしたら喜んでもらえる。」
僕は、お金に囚われて・・・
そんな簡単なことにも気付くことができませんでした。
帰国した後、僕らはサービスを見つめ直しました。
すると、今まで気付かなかったことが見えてきました。
「安い方が喜んでくれるから、安くする。 」
だけど・・・
「安いから、こんなもんで良いでしょ?
「安いから、これくらいしかできない。 」
いつの間にか、そうやってサービスをつくってしまっていたこと。
結果、お客さんの結果に繋がっていなかったこと。
それから、悩みに悩んで・・・
勇気を出して
値段を一気に倍にしました。
そして・・・
それ以上の価値を提供する覚悟を決めました。
「お客さんが得られるもの」を伝えるようにしました。
すると・・・
以前の倍の値段になったのに
お客さんが以前の倍以上増えだしました。
そして、そのお客さんと交わした会話は、
今も忘れられません。
「前から知ってたんですが、
値段が安すぎて頼めませんでした。」
「え??何でですか??」
「いや、自信がないのかなー」と思って・・・。
それから、新しくお客さんになった方達に、この質問をしました。
「安いサービスってどんなイメージですか?? 」
色んな答えが返ってきました。
「丁寧にやってくれなさそう。 」
「責任感がなさそう。」
「結果が出なさそう。」
その答えを聞くたびに、
「安ければ安いほど良い。 」
と思ってた自分の間違いに気づきました。
今、うちが提供しているサービスは
市場よりもはるかに高いものばかりです。
だけど、お客さんになってくれる方達は
「安すぎる!! 」
と言ってくれます。
それは、市場と比べてって話じゃない。
それは、同業と比べてって話じゃない。
それは、
「得られた結果に対して安い」ってこと。
そして、そうなれたのは
あの無理やり連れていかれたスキューバのおかげ。
あれから、6年・・・
「みんなが笑って、みんなが幸せになる仕事」
僕たちは、いつもそれを心がけ続けています。
僕は、そんな仕事をしていただくために講師をやっています。
あのスキューバの船の上のように・・・。
【このコラムの著者】
マインドプラス 代表取締役
春明 力 (はるあけ ちから)
中小企業の経営者、個人事業主に向けてセミナー・講演を主に担当。主催、講師を務めたセミナー数は、200回以上、参加者数も1900人を超える。スクール、ワークショップ、外部でも講師を務める。
【プロフィール】
長崎県にある炭鉱業と漁業が盛んだった西海市出身。小さい頃は町は活気に溢れていたが、12歳の頃から地元の炭鉱がリストラを始めたことにより、友人達の親をはじめ、失業者が・・・
>>春明のプロフィール・活動・評価はこちら
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