はじめに
パソコンを開いて、『起業』と検索すると、3千万件を超える検索結果が表示されます。
そのページの中には、起業の辛さを延々と書いているものもあります。
―起業なんて、絶対にやらない方がいい。
―起業は辛いことばかり。
―起業は地獄だ。
一方で、起業を勧めるものもあります。
―起業は楽しい。
―起業しないと、もったいない。
―早く起業した方がいい。
そのどちらもが正しいのだと思います。
起業が辛い人は、起業が辛い世界に住んでいて、
起業が楽しい人は、起業が楽しい世界に住んでいるから。
起業が辛い人は、起業が辛いと感じるやり方をしてきて、
起業が楽しい人は、起業が楽しいと感じるやり方をしてきているから。
僕は、10年前に起業しました。そして、1万人を超える起業家さん達に出逢ってきました。一緒に頭を抱えたり、泣いたり、喜んだり、深く関わらせていただいた人達も沢山いらっしゃいます。
・人生で1円も稼いだことがなかった20代の方が、1年後に憧れの雑誌に連載を持ちました。
・派遣会社に勤めていた30代の営業の方が、半年後に毎月100人を集める講師になりました。
・引きこもりだった40代のデザイナーさんが、スクールを開校し、出版まで果たしました。
・コーチング未経験だった30代の方が、1年半後にオリンピック選手やドラフト選手を育てるまでのコーチになり、本まで出版しました。
・中卒で起業した方が、社員100名を超える会社をつくり、まもなく上場しようとしています。
幸せなことに、ほとんどの人達が起業する前の「誰も知らない人」だった頃から、
ずっとそばで見させていただきました。
そうして、長い時間を経て、ようやく、その人達の共通点を見つけることができました。
その共通点をお話しする前に、ひとつだけ思い出してほしいことがあります。
これから起業するあなたは、既に起業しているあなたは、
なぜ起業したいと思いましたか?
「会社が嫌だったから。」
「会社の上司を見ていて、こうなりたくないと思ったから。」
「待遇や、給料に不満があったから。」
「もっと自分の可能性に挑戦したかったから。」
「いいアイディアが浮かんだから。」
「もっと世の中に貢献したかったから。」
きっとひとりひとり答えは違うと思います。
けれどそこには、必ず共通する理由があります。
会社が嫌でも、自分の可能性に挑戦したくても、もっと世の中に貢献したくても、必ずしも起業という道を選ぶ必要はありません。転職することで、叶えられる可能性もあります。
それなのに、起業を選ぶのは、起業を選びたいと思ったのは、
自分がやりたいようにやりたい。
自分が描く幸せを、自分が信じる方法でつくりだしたい。
きっとそう思ったからです。
これまで歩んできた道の中で、挫折があって、迷いがあって、手にした幸せがあって…。
その中で手に入れてきた大切な気付きがあって、光が見えて…。
その光をもっともっと全身に浴びたくて、誰にも縛られずに自由に、自分が信じる道を歩きたいと思ったからです。そして、そうなれる自分を信じたからです。
幸せを叶えた人達、起業を心から楽しんでいる人達。その方々の共通点も、まさにそれでした。
自分が描く幸せを信じること。
自分が信じる道を歩くこと。
そして、それを貫き通したことです。
その先に、人々を幸せにし、自らも幸せになっていく未来がありました。
そして、その人達がつくり出すものに、魅了された人達がいました。
その人達がつくり出すものに、救われた人達がいました。
その人達がつくり出すもので、未来を切り開いた人達がいました。
だけど、一方で、それを実現できない人達も沢山見てきました。
最初は、自分を信じて、自分の未来を信じて歩み出したはずなのに、うまくいかずに、自信をなくし、人に流され、自分を偽り、「私はダメだ。」と口にする方達にも沢山出逢ってきました。
だけど、それは、ただ知らなかっただけなのです。
「信じる幸せ」の描き方を。
「信じる道」の歩き方を。
僕自身も、それを知りませんでした。いや、知らないことすら知りませんでした。
だけど、沢山の出逢いから気づきをもらい、幸せな世界を歩けるようになりました。
そして、心から願えるようになりました。
光差す場所を、あなたが笑顔で歩くことを。
その場所で、あなたが信じる幸せな世界をつくれることを。
その世界に、あなたが幸せにしたい人が集まることを。
その世界を、もっともっと幸せな世界にしていけることを。
その願いを叶えるために、この本を書きました。
例え、今光が見えていなかったとしても、晴れやかに歩き出してほしいと願っています。
できなくて落ち込んだのは、できると信じていたからで。
今もまだ悩んでいるのは、これからできると信じているということだから。
【もくじ】
はじめに
第1章「いてはいけない世界」にさようなら
~今いる場所で咲けないなら、光が指す場所へ~
今いる場所で咲けない理由
「仕事」という前提を捨ててみる
【ワーク1】心からやりたいことをみつけるために。
評価は、他人の偏見にしか過ぎない
【ワーク2】なくした自信を取り戻すために。
最悪が怖いなら、お金が心配なら、めいっぱい最悪を描いてみる
【ワーク3】不安を取り除くために。
家族に迷惑をかけたくない。その先にあるものは?
【ワーク4】新しい一歩を踏み出すために。
会社をやめることよりも、もったいないこと。
第2章 「幸せしかない仕事」のつくり方
~本当に大切なものは、既に自分の中にあるから~
幸せになるための偏見を持てばいい
安売りした先に待つもの
楽しさをつくり出せない思い込みを変えよう
本当に好きな仕事のつくり方
【ワーク5】幸せな仕事をつくり出すために。
自分が味わった幸せを、他の人にも届ける仕事
【ワーク6】幸せな瞬間をつくる仕事のために。
失った笑顔を取り戻すために
【ワークシート7】過去を幸せにする仕事のために。
不幸だった仕事も、幸せな仕事に変わる
値段を上げた方が売れた理由
自分の心を他人に任せない
変えられない大切のために、変わる大切がある。
【ワーク8】つくりたい幸せをつくるために。
第3章 心から幸せにしたい人から、求められるために
~心からの言葉で、大切になる人達の心を動かす~
あなたは、誰のために働いていますか?
特別な人になる方法
あなただから幸せにできるお客さんとは?
不満は何から生まれるか?
不安を希望に変えるために、最も大切なこと
見たこともない人を理解する
会ったこともない人の心を動かす
【ワーク9】幸せにしたい人に、届く言葉をつくるために。
幸せは、短い言葉では伝えられないから
【ワーク10】幸せにしたい人に、求められるために。
「できないこと」なんて、誰も聞きたくない
嫌な人が、いい人に変わった理由
第4章 最高を越える世界のつくり方
~どこまでも自由で、どこまでも幸せな世界へ~
大好物でも、食べ過ぎたら
最高の幸せを、あなたはまだ味わっていない
【ワーク11】最高に幸せな日々を歩むために。
あなたは素晴らしくて、そして
【ワーク12】幸せな世界をつくるために。
あなたは、もう歩き出しているから
【ワーク13】幸せへの一歩を踏み出すために。
あとがき
今いる場所で咲けない理由
僕には2歳になったばかりの息子がいます。
アリが大好きで、アリをみつけるたびに、まるで宝物を見つけたように大きく口を開きます。
ある日、いつものようにしゃがみこんでアリを見ていたはずの息子。その息子の姿を見て、ひどく慌てました。息子が手のひらでアリをつぶしていたのです。
驚いて、息子の顔を覗き込むと、息子は何かつぶやいていました。
「…いい子いい子」
大好きなアリに「いい子いい子」してあげたかっただけだと気づきました。
その時、偶然そこを通りかかった人が、アリをつぶしている息子を見て顔をしかめていました。その顔を見て、なんだか、すごく悲しくなりました。
その出来事がしばらく頭から離れませんでした。
大好きを抱きしめすぎて、壊してしまう。
大好きを抱きしめたら、周りに顔をしかめられる。
そういう経験を、どれだけの人がしてきたのだろう?
アリ、空っぽになった栄養ドリンクの瓶、ペットボトルのフタ…。息子は、そういうものが大好きです。息子にとって宝物です。
だけど、嬉しそうに宝物を抱えている息子に、大人は言います。
「もっといいモノが、あるよ。」
そうして、買ってきた鮮やかな色のおもちゃを渡します。好きなものの基準を変えようとします。
それでも、子供は自分が大切なものを宝物にします。ほしいものをほしいと言います。やりたいことをやりたいと言います。
それが、周りに理解されないものだとしても…。
「自分が何をしたいのかがわからない。」
そういう大人達に、沢山出逢ってきました。その人達も昔は、自分の宝物がありました。だけど、ほしいものをほしいと言ったら、否定されました。やりたいことをやりたいと言ったら、嫌な顔をされました。
周りを気遣って、本音を言わなくなりました。人に嫌な顔をさせないように、人に迷惑をかけないように…
好きなものを好きと言わなくなりました。
ほしいものをほしいと言わなくなりました。
そうして、いつの間にか「自分は何がほしいのか?」「自分は何をやりたいのか?」が分からなくなりました。
そこにあったはずの宝物も、希望も、周りの目に飲み込まれて、見えなくなりました。
起業している、していないに関係なく、仕事がうまくいかない人達の大きな原因のひとつがこれです。
本当にやりたいことをやっていない。
自分の意見を周りに否定されて。
人の意見に同意したら、肯定されて。
そうして、周りの声だけを鵜呑みにしているうちに、いつのまにか「周りの評価」を中心に自分の人生の選択をしてしまう。
「自分を犠牲にしてでも、人に尽くさないと。」という先輩起業家の声を聞いて、いつのまにか、自分を雑に扱うようになる。
「成功者の真似をすればいいんだ。」という本を読んで、いつのまにか自分を見失ってしまう。
「起業したら、沢山のお金を稼がないといけない。」というコンサルの声を聞いて、いつのまにかお金だけが目的になってしまう。
そうして、気づかないうちに「やりたくないこと」をやってしまっていた人達が沢山います。
だけど、たとえば「お金」を目的にすれば、果たしてお金が得られるのかというと、それは違います。
お金を目的にすればするほど、お金をなくしていった人がほとんどです。
なぜなら、そういう人達は、完全にお金を目的にできないのです。
本当は、
お金よりも大事なものがあるから、行動がついていかない
のです。
そもそも、お金だけが目的ならいくらでも方法はあります。
時給2千円のアルバイトを、1日18時間。それを月に30日やれば、月収は100万円を超えます。
でも、それができない。…いや、そうしたくないのです。
人には、心があります。
心を誤魔化している時、自分はどうなっているでしょうか?
どんな顔で人と接しているでしょうか?
どんな言葉を周りに伝えているでしょうか?
もし、あなたがそうなってしまっている時、あなたの姿を見た人は、あなたを必要とするでしょうか?
心からやりたいことをやっている人達。
いや、心からやりたいことをやると決断した人達は、本当に幸せそうです。
やりたいことだから、本当に楽しそうなのです。
楽しいから、笑えます。
楽しいから、行動できます。
そして、その姿は、周りの笑顔と幸せをつくっていきます。
そういう人達を見ていると、いつもこう思うのです。
僕らは否定されないために生まれてきたわけじゃなくて、
幸せをつくるために生まれてきた。
ほしいものをほしいと言ったら、否定する人もいます。
やりたいことをやりたいと言ったら、嫌な顔をする人もいます。
だけど、
あなたの幸せは、他の誰かに押し付けられるものじゃありません。
あなたの幸せは、あなただけが決められるものです。
そして、その幸せを分かち合える人達が必ずいます。
ほしいものをほしいと言ったら、喜んでくれる人もいます。
やりたいことをやりたいと言ったら、応援してくれる人もいます。
あなたのやりたいことを必要としている人は必ずいます。
あなたの大切を必要としている人は必ずいます。
アリをつぶしてしまうほどの力強い「いい子いい子」を、息子は僕にしてくれる時があります。
それは、僕にとっては、とっても優しい「いい子いい子」です。
誰かに顔を歪められたあなたの想いも、他の誰かを笑顔にする想いになります。
「仕事」という前提を捨ててみる
何よりも大事なものは、「本気でやりたい」という気持ちです。
幸せに働いている人達の話を聞いていると、つくづくそう感じます。
・友達の新居探しまで付いていくほど、家が好きだった人が不動産屋に。
・自宅をコーディネートするたびに気持ちが弾んでいた人が、インテリアコーディネーターに。
・本を読む時間がたまらなく好きだった人が、作家に。
・ダンスを習う時間も、人前で踊る時間も至福の時間だった人が、ダンスインストラクターに。
・体を鍛えて自分が変わっていくのが喜びだった人が、パーソナルトレーナーに。
・服が大好きだった人が、イメージコンサルタントに。
・ボードゲームが大好きだった人が、ボードゲームコンサルタントに。
そんな話を聞いていると、胸が弾みます。
やりたいことをやっている人達の存在は、やりたいことでうまくいっている人達の存在は、やりたいことを諦めきれない人達の光になるから。
だけど、時に、
起業はしたいんだけど、やりたいことがない。
という人にお会いすることもあります。
「起業がしたい。」というのも立派なやりたいことだと思います。
「自分が思うままの働き方がしたい。」それも立派なやりたいことです。
(『起業のち晴れ』より抜粋)